tugami-miyuki_koumura01

津上みゆきさんの「めぐりくる時と風景」を見てきました。

会場は大崎駅から歩いて10分ぐらいのところにある「光村グラフィック・ギャラリー」です。光村出版といえば、学生の頃に教科書でよくお世話になりましたが、ここは光村出版のお膝元なんですかね。

私が行った日はギャラリートークが行われた日(2024/9/28)でした

ギャラリートークの会場は光村グラフィック・ギャラリーの入口のところだったのですが、人の出入りが激しくて、入場者の出入りは当たり前ですが業者の人も入ってきたりしてました(笑)。ギャラリートークはマイクなしで行われていたので、ドアが開くと交通の行き来が激しい外の音が入ってきてトークで何を話しているか聞こえないことが多々ありました。当日はインスタライブで配信されていたと思いますが、スマホ1台で配信していたようだったので、配信で見ていた方は音がよく聞こえなかったんじゃないかと思います。会場にいてもそんな感じでしたので。

トークは2時間ぐらいで、

  1. 稲葉友汰さん(長崎県美術館・学芸員)との間柄について
  2. 9月に発売した作品集(View, 20 Pieces, 2020-21)について
  3. 今回の展示について
  4. Q&A

という構成でした。以下、個人的に記憶に残っていることを簡単に書いておきますが、ちゃんとメモして聞いていたわけではないので間違っているところがあってもご容赦下さい

目次

稲葉友汰さん(長崎県美術館・学芸員)の間柄について

・長崎県美術館で展覧会を開催した時の担当だった
・作品を文章で的確に表現してくれていると思っていたので、今回の作品集にも文章を書いてもらった

9月に発売した作品集(View, 20 Pieces, 2020-21)について

・コロナ期の作品をまとめたもの
・当時は作品集のようなものにまとまると思って描いていなかった
・作品タイトルによく使われる”view”という単語は「見る」ことと「ものの捉え方」という両方の意味が入っていて深いですよね、という哲学的な会話のやりとり
・作品を描くときは大きなインスピレーション的なものが浮かぶというより、気になる素材を時間と”view”を何度も重ねながら徐々に正体がわかってくる感じな気がする

この作品集に掲載されている作品は、先日のAnomalyで展示された作品が多いなぁと、あとで作品集を見て気づきました

津上みゆき 欠片、植物、人の場所 ANOMALY / Colorful

今回の展示について

・今年のカレンダーを光村出版から依頼されたご縁からのご褒美的?な催し
・時が移りゆくカレンダーはまさしく”view”的な要素に溢れていた
・カレンダーは異なる時代の作品から季節に合った作品を選んだので、いつもの時系列の並びとは異なる新鮮な構成になった
・今回の展示は最新(2024年)の作品が入口付近にあり、コロナ明け頃(2022年)に描いた作品が中盤ぐらいにあり、その間のつなぎとして、最近描いた、五反田、目黒川、天王洲アイル辺りの作品をブリッジとして置いてみた。その奥には小説「イン・ザ・メガチャーチ(朝井リョウ作)」で使用した作品を並べた

・最新作は家から見た庭を描写した作品。近く取り壊されてしまう景色を残しておきたくて描いた。毎日、朝だったり夕方だったり、ちょっとずつ書き足して重ね合わせている。夏の暑い日は帽子をかぶりながら描いていた

tugami-miyuki_koumura06
View, A Place, 12 July – 16 August, 2024 (2024)

tugami-miyuki_koumura05
View, A Place, 12 July – 26 August, 2024 (2024)

・この作品は(知らない方がいいかもしれないが)お墓をかいたもの(と言っていたと記憶)

tugami-miyuki_koumura09
View, 3:12pm 20 Sep 2023/2024 (2024)

・コロナが明ける時、ぱっと光が差したように感じたので、このような作品になった

tugami-miyuki_koumura03
View, Throught the Doors, Morning 16 Jan 2022 (2022)

tugami-miyuki_koumura04
View, Following the Trees, Morning 16 Jan 2022 (2022)

・目黒川沿いの作品は、描いているところを見られるのが恥ずかしいので目立たないようにこっそりと描いていた

tugami-miyuki_koumura07
View, Following the Flow, 6:50pm 14 June 2024 (2024)

tugami-miyuki_koumura08
View, Following the Flow, 7:05pm 14 June 2024 (2024)

・小説のための作品は大小様々。小説がどう展開するか分からないので、イメージで描いた。それが逆によかったかも

tugami-miyuki_koumura10

Q&A

Q1:「今度依頼されたらどういう小説の画を描きたいか?
A1:あまり小説読まないので・・・。こちらから逆指名とかできるんだろうか(笑)(※この後、どなたかの名前を出していた気が。失念)
Q2:「どういうきっかけで画家になろうと思ったのか?」
A2:私の書籍(「時の景: つなぐときつもるとき」)を読んで下さい、うそ、うそ冗談です(笑)。未だに「画家」という職業を名乗るのがしっくりこない。外国に行ったときに職業を聞かれて「画家」と答えたら「あ、そう」ぐらいで返された。日本では特殊な職業のように思われているが、そうでもないんだなと思った。大学院の頃に賞をもらった関係で今までなんとか画家としてやってこれているだけ。まぁ画しかかけないんですけど。ちなみに対談相手の稲葉さんは初めから学芸員を目指していて頑張ったらしい
Q3:「どうしてあのような画が描けるんですか」
A3:自分もよくわからない。あのような風景が目に浮かぶから、としか言いようが・・・
Q4:「津上さんが使っているあの小さいスケッチブック、私も欲しいんですけど」
A4:当初は既製品を使っていたが、最近自分専用のスケッチブックを発注して作った。たくさん作れば作るほど安くなるので、死ぬまであと何枚描くかなと想像して発注したが、ワークショップで欲しいといわれた人にあげていたら、だんだん数が少なくなってしまった。もう一回ぐらい発注しないとダメかも。一般の人に販売するほど需要はないと思う(数人からしか欲しいと言われていない 笑)

まだまだたくさん話していたと思うのですが、覚えている範囲で書いたものなので、こんなところでしょうか。

以下、個人的な感想です。

今回の展覧会の作品もとても魅力的に感じました。ただ何が良いのかは(いつも通り)言葉では説明できません。今回のギャラリートークでは作品の背景をいくつか説明してくれたので、今まで見た作品に比べると具体的にイメージできました

今回発売された作品集「View, 20 Pieces, 2020-21」(2750円)は会場で購入しました。ギャラリートークが終わった後、ご本人が会場に残っていらしたので、サインをもらう人や本人とお話しをしている人がチラホラいて、私もその流れの最後尾でサインを書いて頂きました。ついでに同時代を生きている証として私の名前も入れてもらいました

美術館で見る作品の画家さんはもう亡くなっている場合がほとんどですが、今回の場合は画家さん本人が目の前にいるというのが新鮮でした。ただご本人と何か話すことがあるかというと、正直言うと特にないんですよね(苦笑)。津上さんの作品はなぜか好きですが、書いているご本人に興味があるかどうかは私自身よくわかっていません。それはこのブログでよく書いている私の好きなアーティスト、教授(坂本龍一さん)、幸宏さん(高橋幸宏さん)、小林愛実さん、に関しても同じです

ただ直接ご本人にサインを頂くにあたり、無言でサインだけもらうのも失礼だと思って、「アーティゾン美術館の作品を見て、見るようになりました」と話しかけたところ、津上さんから「アーティゾンから見始めた人、多いですよね」と返してくれました。それでもまだ間が持たなかったので「赤がすごいですね」などと言ってしまったのですが、無言で見つめ返されてしまいました(笑)。アーティストサイドもこういう時の対応は困るんでしょうね(苦笑)

作品を見る側はアーティストさんに憧れている場合が多いので、あれこれ聞きたくなりますが、逆に知らない方がいいのかな、と最近は思ったりしています。アーティストさんは常人とは違う才能を持っているからアーティストなのであって、私たち一般人には理解できないことがたくさんあるんだと思うんですよね。あれこれ聞いてみたところで、私がわかるはずもないですからね

ただ、津上みゆきさんの作品は何か心に響くんですよね。何かはわからないんですけど(笑)

tugami-miyuki_koumura02
View, a pine tree, 12:15pm 30 March 2019 (2019)